遭遇したくないものに遭遇してしまった。
磐梯吾妻レークライン
ここは山の中、土湯方面へ向かう国道115号線と裏磐梯の湖の間をぬって走る福島県道70号線(レークライン)が分岐するところ。
この時点で16時。
もともとレークラインを走るような予定を立てていなかったが、せっかくここまできたのだからと左へ曲がった。
私はここで選択を誤った。国道115号を引き返すべきだった。
映える紅葉と焦り
実に見事な紅葉である。
しかし、お分かりいただけるだろうか。
陽が沈もうとしている。
出口まではここから15kmほど。道中にはレストハウスが一軒だけある。
1時間はかかるだろう。17時半ごろになってしまうか。
日没が16時45分と仮定すると、私は暗い山道を走ることになってしまうだろう。
もちろん街灯など存在しないし絶望的だ。
考えるほど精神が追い込まれる。
進むしかないが。
勾配の連続と疲労の蓄積
レークラインと国道115号の分岐点の標高が845m。
スタートポイントについた時点で脚に疲労が溜まっていた。
レークライン入口の長い坂と、アップダウンの連続。
登りでは脚に力が入らなくなるし、下りでは視界不良でスピードは出せない。
だんだんと陽が沈んでいく。そして焦る。
やっと一つ目の湖
レークラインが脇を通る湖(秋元湖、小野川湖)の一つ、秋元湖。
正直写真なんて撮っている暇ではないのだが。
観光道路であるのにこの時間になると車が非常に少ない。
臆病な私の限界に近いところまできていた。
熊出現
中津川渓谷レストハウス手前のところ、
私の進行方向50m先に動物が見えた。
よくみたら子熊だった。真っ黒ではなく色が薄かった。
熊に遭遇するという経験は初めてだった。しかも自転車で。
いざこのようなときになると動きが止まる。動けない。
子熊は私を2秒ほど見たのちに森に逃げていった。
これは絶対親熊が出てくるパターンだと恐怖した。
急いで自転車を漕ぎ出す。レストハウスの駐車場に逃げ込む。
正直熊に遭遇するとは思わなかった。
闇に加えて熊という恐怖の対象が増えた。
必死の下り坂
レストハウスを出発し、先を急ぐ。
まだ少し明かりはあるようだ。
しかしこの先また熊に遭遇するのではないか。
帰れないことが頭に浮かんできた。
急ごうとしても脚が動かない。
疲労困憊。
レークライン最高地点を過ぎ、下り坂をなるべく速く下る。
暗くて見えにくい。
明かりがもたらす安心感
17時10分、レークライン出口。
信号とガソリンスタンドの明かりが見えてきたときの安心感はとてつもないものだった。
ライトは人類最大の発明だ。
熊と闇の対策
今回のサイクリングで感じたことは、ライトの光量と熊対策の不足である。
ライトは一つしかつけておらず、夜間走行を想定するならば複数装備するべき。
また、山道を走るならば熊鈴、ポータブルラジオを携帯するなどといった対策が必要だ。
自転車に熊鈴をぶら下げながら走ればいいか。
怖かったの一言である。
熊には気をつけていただきたい。
おわり。